[レポート] Mix Leap Study #36 – BIツール:Tableau ジェダイの帰還 #mixleap #tableau
はじめに
どうも。DI部@大阪オフィスのtamaです。
3月7日、珍しくTableauユーザー会以外のTableau関連のイベントが関西で行われるということで、思わず潜入してきました(勢いで潜入という言葉を使いましたが、正式な手順で正面から参加しました)。
概要
- 【増枠】Mix Leap Study #36 - BIツール:Tableau ジェダイの帰還 - connpass
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2019/03/07(木)
- ヤフー株式会社 大阪グランフロントオフィス
今回のMix Leap Studyは、データの分析、可視化をテーマに、BIツールの代表格でもあるTableau(タブロー)に関しての講座を開催します。
(中略)
今回は、楽天様と弊社ヤフーの「Tableau Jedi」のお二人を交えて、実際にITビジネスサービスでの導入・改善事例などをお届けします。 ITサービスの分析や経営管理のご担当者はもちろん、経営企画などをされている方にとっても参考になる講座内容になっていますので、ぜひご参加ください。
Mix Leapとは
最初に、ヤフー株式会社の中川雅史氏より、「Mix Leap」の説明がありました。
Mix Leapとは、「KANSAI UPDATE」をテーマに、ヤフー大阪が定期的に開催している勉強会又は交流会です(1年半ほど継続中)。幅広い分野の第一線で活躍する人たちと交流できる場を提供しています。また、学生も対象としており、これまで非常に多くの学生が参加してきました。
今回はMix Leap “Study” なので勉強会ですが、他にもLT大会や、異業種の人たちでワークショップといったイベントも開催しています。
Tableauの目指す世界 ~すべての人に、データの力を!~
- 山崎 淳一郎氏
- Tableau カスタマーサクセスマネージャー
Tableauと「Tableau Jedi」についてのお話でした。
Tableau Jediとは
冒頭、なんと、Tableau Jediの説明資料として、スターウォーズのオープニングをパロティしたJedi説明動画が流れました。ちゃんと曲も流れていました。
Tableau Jediは「データから力(フォース)を引き出せる人」ということですが、要するにデータから色々なインサイトを引き出して、それを活かせる人のことです。Tableauに関する技術力はもちろんですが、社内外にTableauを広める(データドリブンカルチャーを広める)ことも、Jediの役目(条件)として非常に重要です。
Tableau社の概要
Tableau社(と、Tableau Japan)の概要が説明されました。業績とは非常に順調ということ、また利益の3割程度を開発に投資しているため、品質の高い製品をリリースし続けることができていることが紹介されました。
The world’s most valuable resource is no longer oil, but data
Tableau社が定期的に紹介している一文です。
「世界で最も価値ある資源は、もはや石油ではない。データだ。」ということで、今後、以下にデータを扱えることが重要か…ということを説いています。
ちなみに、これはイギリスの『Economist』誌が発表した記事の題です。
視覚化の重要性
同じ文字色の数字が画面いっぱいに羅列された画面が映し出され「この中で『9』はいくつありますか?」というクイズが出題されました。とてもすぐにはわかりません。次に「9」だけ別の色がついた画面が登場しました。これだと、色のついた数字だけを数えれば、すぐに答えがわかります。
人間には認識しやすい視覚属性というものがあります。先程のクイズは特定のものだけ別の色をつけて強調したことで、すぐに認識することができました。
Tableauも、こういった「認識しやすい視覚属性」という表現ができるように開発されています。具体的にどういったものがあるのかは、下記のTableau Publicを御覧ください。
データの格差社会(Data Divide)
デジタルデバイドという言葉があります。情報技術を使える人とそうでない人の格差を表した言葉ですが、昨今では「データデバイド」という言葉が出てきました。「データを活用できる人とそうでない人」の間では、ビジネス上における格差があるということです。スケールの大きい話として、データを活用できるかどうかでGDPに差が出る…といった話もあります。
また、社内にもデータデバイドは存在します。データはあっても、一部のデータサイエンティストしか扱えない・わからない…こういった状態では、データドリブンな組織運営はできません。
Tableauのミッション
Tableauで誰もがデータを扱えるようになり、データデバイドを縮目ます。データを共有言語として広めていくことで、「人と組織がデータドリブンになることを支援する」…これがTableauのミッションということで、本セッションは終了しました。
Yahoo! JAPAN流 Tableau推進のコツ
- 平林 和也氏
- ヤフー株式会社 データ&サイエンスソリューション統括本部 データプラットフォーム本部 アナリティクスプラットフォーム部 BIプラットフォーム
- Tableau Jedi
Tableauを社内にどうやって広めていったか、という話です。Tableauだけでなく、BI製品全般に適用できる話ではないか、ということでした。(なんと指し棒の代わりにライトセーバーを持参!)
Tableauを導入することになった背景
ヤフーのデータ分析環境として、今までは各分析フェーズ毎に、内製のソリューション(ツール)を使用していました。しかし、データの量と種類がどんどん増えていく(Excelでは処理できないレベル)ことで、内製ツールでは分析が追いつかなくなってきました。
また、フェーズ毎にツールが違うため、データの分断が発生していました。一方のツールで分析して分かったことを、別データで検証したい場合、そっちのツールを使って、先程のデータと関連させて…という作業に非常に時間をとられます。
分析のセルフサービス化をするためにTableauを。
データを分析したい人が、それぞれ自分たちで分析できる環境を用意するために、Tableau導入を決断。数あるBIツールからTableauを選んだ理由は…
- 使う人を選ばない
- 非エンジニアでも使える
- 逆にエンジニアやデータサイエンティストも使える
- R、Python連携
- APIやSDKも豊富
- 内製のチャットツールと連携したり
- 誰でも使えるので流動的な組織に対応
- 引き継ぎ等の連携が用意
推進体制
CoEチームというTableau推進本部のような組織を用意。ハンズオンセミナーや各部署向けの導入コンサルを実施。また、ざっくばらんに答える「よろず相談」を行うことで、社内にTableauを広めていきました。
また、Tableau Serverを導入・運用し、利用部門毎にサイトを分けて運用しています。
推進のための5つのコツ
熱量がある人を見つける
- まずは「既存業務を効率化したい人」を巻き込みます
- 既存業務の課題を解決してモチベーションを上げた後、さらなる新しいチャレンジに取り組みます
ビジネス、組織、役割を理解する
よくあるパターンとして、分析したい人が、欲しいデータの取得作業をエンジニアに依頼する、というものがあります。依頼があるたび、エンジニアはデータ取得作業に追われます。しかし、エンジニアの本来の役割は、データを取り出すことではなく、サービスを開発することです。
分析したい人にTableauを与え、直接データに接続させることで、メンバーの本来の役割を全うできるようにします。
ルーチンワークに組み込む
普段の業務にTableauを組み込んでしまうのは効果的です。部門のKPIダッシュボードや、定期的に出力する経営層向けレポートをTableauに置き換えて、普段からTableauを使用するようにします。
アウトプットにこだわる
継続的にTableauを利用したくなるように、アウトプット(ビューなど)を定期的にブラッシュアップしましょう。
コミュニティを形成する
ヤフーでは、データに関する社内イベントを開催しています。そこで、Tableauの利用者に登壇してもらい、「Tableauのみかた」を作ることで、より社内推進を加速させます。
今後の展開
ヤフーグループ全体を、よりデータドリブンにしていきたいと考えています。Tableau環境を強化したり、Jediを育成したり、さらにはコミュニティを拡大して、今後「データ」をグループの共通言語にしていく予定です。
データ分析ツールを内製からTableauに移管した話
- 田村 健氏
- ヤフー株式会社 データ&サイエンスソリューション統括本部 エリア関西
内製ツールでよくあるパターン
- Aさん「この棒グラフを線グラフに変えてください」→その通りに開発
- Bさん「なんで線グラフに変えたんですか?棒グラフに戻してください」→グラフ形式を選べるボタンを実装
- Aさん「余計なボタンが増えて使いづらくった!」→どうにもならない
システムに求める要件は利用者それぞれで異なります。利用者全員の要望に完璧に応えたシステムは不可能です。
プロジェクト体制
データ分析PJでよくある体制として下記があります。
- 企画の人
- エンジニアの人
- デザイナーの人
- アナリストの人
しかし、田村氏の場合は下記の通り。
- 企画 田村氏
- エンジニア 田村氏
- デザイナー 田村氏
- アナリスト 田村氏
※他部署のサポートはある。
社内業務を効率化するPJのため、リソースは限定的。分析者がある程度自分で分析できる環境が必要でした。
システムを置き換え
旧システム
あるデータをストレージに配置し、MySQLに格納。そのDBを参照するApache+PHP環境の内製ツールを、各アナリストが使用する形でした。また、ストレージから直接人力集計してレポート作成という業務が発生したり、内製ツールからさらにデータを落としてExcelレポートを作成するといった業務もありました(経営層向けレポート)。フェーズ毎(というかサービス毎)に担当チームが異なるため、対応がとにかく大変。
現システム
MySQLをTeradataに、内製ツールをTableau Serverにチェンジ。元データからTeradataまではETLツールで処理させています。分析レポートはTableau Serverにパブリッシュし、アナリストや経営層などは、全員Tableau Serverを見るようにしました。
置き換えて解決したこと
- Tableauに変えたことで、分析者が好きなようにレポートを作成できるように
- データベースを直接見てもらうことで、セルフサービスの分析化を推進
- ETLツールとTableau Serverを導入することで、管理対象を削減
教訓
基本的に、分析のセルフサービス化につながる話です。
BigData BI in Rakuten
- 浅井 祥人氏
- ECマーケットプレイスビジネスサポート開発部 ECビジネスエンパワーメント課 ビジネスデータプラットフォームグループ
- Tableau Jedi
こちらも、Tableauを社内にどのように推進したのかという話です。(スライド公開はNGのため、写真はありません)
Tableau導入の目的
「ECコンサルタント(ECC、営業)のため」
当時、ECC部隊には以下の課題がありました。
- ECCの提案準備の時間削減
- 提案力
- 顧客満足度
- データ抽出時間の削減
これらを解決するためにBIツールの導入を検討しました。
楽天市場のビジネスモデル
各店舗に「楽天市場」という売場を提供する形です。他にも、その店舗の売上を上げるためのコンサルティングを行ったりします。また、ECC部隊は全国各地に配属されています。
Tableauを選んだ理由
他のBIツールより使いやすく、ビジュアライズが美しいこと。また、作成したビューの共有が容易であることから、Tableauを選びました。
現場から挙がってくる声
- BIツールとはそもそも何?
- Excelの方が使い慣れている
社内のTableauエバンジェリストメンバーで合同研修を実施。Tableau推進のための各施策を決めました。
まず、ExcelとPowerPointで作られたものをTableauに置き換えました。ヤフーさんの事例と似ていますが、既存業務にTableauを組み込んで推進しようという考えです。
次に挙がってくる声
- データの量と種類が多いのでパフォーマンスが出ない
- Tableau用のデータマート乱立で管理が大変
Tableauを推進した後、今度はTableauを使用する上での悩みが上がってきました。Tableauでビッグデータを扱っている人には「あるある」な悩みではないでしょうか。
そもそも楽天のデータは非常に膨大(20ペタバイト以上)、普通に使用しては重くて当たり前です。
まずデータをHadoopに集約します。しかし、Hadoopに入れたままではスピードは出ないので、ATSCALEという分析エンジンに接続します。ATSCALEを導入することで、膨大なデータでもストレス無く分析できるようにしました。
普及活動
全国のECCにTableauを普及するため、全国行脚(各支店に普及活動)を実施。また、主要都市の支店でTableau勉強会を開催しました(もくもく会の形式)。本社ではTableau社のコンサルティングトレーニングも実施しました。
さらに、社内の表彰制度も設けました(Rakuten Tableau Award)。
成功事例
ある店舗様の「サンダルの売上を上げたい」という課題に対して、サンダルの売上傾向をTableauで分析することで、すぐに施策を提案することができました。
現在のTableau利用について
- 652名が利用
- 1025個のビュー
Tableauの導入と普及により、ECCの課題を解決することができました。
Tableauのユーザー教育体系としては、山本五十六の名言「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」に合わせたメニューを用意しています。
おわりに
今回面白かったのは、ヤフー社と楽天社が同じ場で同じ内容で発表を行ったことです。実際「なかなかありえない組み合わせ」と登壇者も仰られてましたが、「Tableau Jedi同士、フォースが惹かれ合ったから実現できました」とのことでした。